遠く 知らない街から 手紙が届くような

ビジネスにも自己啓発にも興味が無い経営者の嘆き

何も起きない気がした 何かが起きる気もした

ふと永い眠りから覚めたときにはもう昼前を過ぎていた。ベランダから慣れない煙草を吹かしながら、空のやたら青さが今日もさえない一日を予感させた。そんな空白ともいえる時間を過ごしていると、確かに何も起きない気がした。それでもよかった。ただ、掌の中にはなにかが起きるのではないかという淡い空気感があったから。なんというか、6帖のワンルームマンションにいながらその閉塞感の中に世界の広がりが常にあった。

気づけばそのような黄金時代は過ぎ、今は訳もなく身震いするような輝きを人生に見出そうという気概を感じなくなってしまった。何かが起きるかもしれない、明日になれば自分とは違う誰かになれるかもしれない、素晴らしい人や文学作品、光景を目の当たりにし人生観を覆されるのではないか…そんなことは起こりえないとわかっていても「何か」を期待できたあのころとは違い、今は何か行動を起こす前にある程度分かるのだ。この人と会うとこれくらいの楽しさで、これを食べるとこれくらいの美味しさで、この映画を見ればこれくらいの楽しさを得られるーーーそんな風につまらない勘定ばかり得意になった。あるいは得意になったつもりになっているのかもしれない。「予想だにしなかった」ことなんて起こる余地が入り込めない寸分の隙もない生活。

ああつまらない文章で人生のように広がりのない文脈だ。人生ってこんなに絶望的だったっけ。