遠く 知らない街から 手紙が届くような

ビジネスにも自己啓発にも興味が無い経営者の嘆き

エッセイ

西瓜と渓の朝

頭がぼんやりしていたので、気晴らしに散歩に出た。大学近くの椿山荘から江戸川橋の方へ向かい、茗荷谷辺りに着くと奇妙な看板が目に留まった。 『ワンルームマンション建設反対!~町の環境を守ろう』 茗荷谷と言えば高級住宅街である。現代的な洒落た建物…

蛍が飛び交う頃きみは

僕は蛍をみたことがない。理由は二つある。まず、単純に蛍をみる機会に巡り合わなかったこと。そして、大学生のうちに一緒に蛍をわざわざ見たいと思える人に巡り合えなかったことだ。 毎年この季節になると、早稲田大学の近くにある椿山荘というホテルが、庭…

江國香織の「あとがき」が素敵すぎる三作品を紹介する

僕は江國香織の小説が好きです。 彼女は恋愛小説の女王と称されることが多々あるため、20歳そこそこの男である僕が彼女の小説が好き、と言うのはちょっとだけ恥ずかしいものがある。 だけど彼女の小説、とても良いんですよね。静かに燃え、夕日が射す様な世…

足の親指と人差し指の関係について

ベランダで煙草を吸いながら、ふと自分の素足をみた。 足の人差し指が、親指よりも長い。それは当たり前のことかもしれないけれど、他の人の足の指の長さなんて気にもかけたことがなかったので、改めてまじまじと見るとこの1センチ弱の長さが何故だか誇らし…

僕も、父親よりスーツを着てる奴らの方が偉いと思っていた。

西川美和の『永い言い訳』を観た。二度目だ。 本作は見事な二項対立を描いている。 頭は良くないが思いやりに溢れ直情的なブルーカラーの父親、そしてインテリではあるが妻のことを顧みず不倫を繰り返す向こう見ずな作家。 作中では、キーパーソンである小学…

痛みをくれる人

id:punkrockes それでも人に会い続ければ突然激しい痛みを与える人物と出会いそして自分は不感症ではないと再認識しその痛みを掘り下げると今まで気にもしていなかった細い路地を見つける。知らんけど。 何て瑞々しい横顔なのだろうと思った。長い睫毛。控え…

不感症

昨日デートしてきた。とてもかわいい女の子だった。年は同じで、興味を持った国には一人で飛び立ってしまうような主体性の持ち主の子だった。正直言って、一緒にいるのが憚れるくらい魅力的な女の子だった。 彼女の優しそうな笑顔に、ある種の冷たさを感じた…

君がいたあの夏の日に

僕に生まれて初めてできた恋人の話をしようと思う。 あれは僕が大学1年生で、鈴虫がまだ泣き始めない夏頃だった。彼女は二つ上で、サークルの先輩だった。大学生活の右も左もわからず、とにかく調子づくことが仕事でありながら人付き合いが苦手だった僕のど…

冬のテラスで飲むホットワインが良い 吉祥寺にて

今年こそ、寒いうちにテラスでホットワインを飲んでおこう、という思いが胸にあった。春が来てしまう前に行こう、よし、明日こそ絶対に行こう、と決めた。低血圧だから、早起きをするために前日は気合を入れて寝た。早く起きすぎてしまった。 10時すぎごろ、…

いつもより、少しだけ丁寧に過ごすということ

今週のお題「ゲン担ぎ」 出版社の就職における筆記試験では、必ず作文が課されるそうなので、毎週このお題に答えて練習をしてみる。 『ゲン担ぎ』 重要なイベントがある前日は、なんとなく間が持たず浮足立ってしまうものである。 そんな時に「ゲンを担ぐ」…

ただ春を待つ

冬は寒いから嫌だと言い、 春が来て暖かくなれば花粉が飛び始めるのが嫌だと言う 花粉も落ち着き夏が来れば暑いから嫌だと言い 暑さも引いて秋が来れば別れの季節だから嫌だと言う 無い物ねだりだね 冬は寒くなければ好き 夏は暑くなければ好き ずっと鈴虫が…